春の雨がお茶を美味しくします
by 黒田九兵衛桜がまだ咲いていますが、春は雨も多くなりますね。
偏西風の影響で気圧配置がたびたび変わるためです。中国からは高温で乾燥した揚子江気団が偏西風に乗ってやってきます。また、冬に支配的だったシベリア気団の冷たい切れ端が到来します。これらが移動性高気圧です。しかし、これらの高気圧が日本列島をすっぽりと覆わない時は、南からの低気圧が入り込みで雨を降らす前線ができます。
気象庁の東京地域の統計では3月は2月にくらべて2倍近い116ミリの降水量になります。そして4月は平年で134ミリの雨が降ります。
この雨がお茶を美味しくします。
例えば、この時期に旱魃(かんばつ)で雨が降らないと植物は成長しなくなってしまうからです。その成長の仕組みは光合成にあります。
光合成は植物の成長のもととなるタンパク質を作る準備段階として欠かせません。光合成は光のエネルギーでデンプンを作る作業です。デンプンは炭素と酸素と水素でできているので根から吸収する水が不可欠なのです。
葉緑体の中の葉緑素が光子と振動エネルギーの大きい赤色と青紫色の光だけを吸収してデンプン工場にエネルギーを供給します。
さらに地中の窒素分を根から吸収して、このデンプンを材料にしてタンパク質をつくり成長していきます。
一般的に5月は紫外線が強い時期なので日焼けに注意、ということが言われています。 確かに、気象庁の統計でも全天日射量(地面に降り注ぐ日射量)は5月が最高で、2番目が4月になっています。
そのため、この時期に植物がぐんぐんと成長していくわけです。
例えば、中国とくらべても緯度は同じ中緯度地域なので気温や日射量では差がないかもしれません。しかし、土壌環境と降水量は中国と日本では異なります。
中国の茶産地の中には春の旱魃に悩んでいる地域もあり、また天然の有機肥料としての窒素分や強酸性土壌に悩んでいるところもあります。
少なくとも、四方を海に囲まれて、春特有の天候要因で、雨の恵みがある日本は美味しいお茶の条件が揃っています。