健康効果について
当社が考える日本茶の健康効果
日本茶を代表する健康成分を3つご紹介します。
カテキン
カテキンは、数あるポリフェノールのなかのフラノボイドに分類されます。日本茶の渋みの主成分で、一番茶から番茶、ほうじ茶に至るまでどの日本茶にも存在します。茶葉には4種類のカテキンが存在します。
乾燥した茶葉のカテキン含有量は15%前後で、摘採時期によって変化し、また栽培条件や品種によっても異なります。一番茶はカテキンが少なく、二番茶、三番茶とカテキン含有量が増えますが、これは日射量に比例してカテキン生成が増加するためです。また、抹茶などの場合、摘採期の2週間くらい前から被覆栽培をして遮光をするため、その分だけカテキン含有量は減ります。
4種類のカテキンを多い順に並べると
- エピガロカテキンガレート (EGCG) 59.1%
- エピガロカテキン (EGC) 19.2%
- エピカテキンガレート (EGC) 13.7%
- エピカテキン (EC) 6.4%
出典) 茶の機能-生体機能の新たな可能性;村松敬一郎(代表) 編(株式会社 学会出版センター)
となります。特にEGCGは抗酸化作用をはじめとする広範な生理活性を持っています。このうち、エピカテキンはお茶以外にもリンゴやチョコレートなどのポリフェノールにも含まれていますが、他の3種類はお茶に特有のカテキンです。
また、酸化発酵を止めるための加熱処理をすることで、形がそれぞれ変化するため、8種類のカテキンがあることになります。
烏龍茶や紅茶の場合、酸化発酵をさせるので、カテキンはテアフラビンなどの酸化重合物に変化します。これは香りの成分で、無色のカテキンは赤色へと変化し、烏龍茶や紅茶特有の香りと色になりますが、酸化せずに残るカテキン量は少なくなります。
カテキンの効用としては、以下のものが報告されています。
- 脂肪分解効果
- 抗酸化作用
- その他の効果(がん予防)
テアニン
アミノ酸はお茶の旨味の成分ですが、お茶のアミノ酸の半分以上がテアニンで、他はグルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、セリンなどです。テアニンはお茶に特有のアミノ酸で、チャノキの根元付近で生成され、幹や枝を通って茶葉の成長に使われます。一番茶の初期の若い芽がもっとも多く、次に一番茶、二番茶と減少し、成長を終えた成熟した芽では極端に減ります。したがって、日本茶のどのお茶にも共通する苦味成分のカテキンとは異なり、上質で高級な日本茶ほどテアニンが豊富です。テアニンの含有量はこれらの条件によって異なりますが、一般的に茶1gあたり6-20mg程度です。
低地よりも日中の寒暖差が大きい標高の高い山で栽培される茶葉は、夜間が冷え込むためテアニンが消費さず旨味のテアニンが強い傾向にあります。また、玉露や抹茶のように摘採期の2週間前から被覆栽培するのは、アミノ酸がカテキンに変化することを抑止し、茶葉に旨味のテアニンを残す意味があります。
テアニンはお茶の旨味成分であり、含有量の高いものほど高価になります。日本人は、古来から旨味成分の高いお茶を高級茶として位置付けてきましたが、近年の研究により、その効用の高さが立証される形となりました。
テアニンが豊富な順にならべると、標高の高い地域の一番茶のみる芽 (当社抹茶天空シリーズ)、標高の高い地域の一番茶(当社美濃白川煎茶)と低地で被覆栽培した玉露や抹茶、低地の一番茶、標高の高い地域の二番茶、低地の二番茶、三番茶以降、ほうじ茶・紅茶・中国茶となります。紅茶や中国茶はカテキンが主体で酸化させ香り成分に変化させるためで、さらに中国茶は高温の釜炒りをするため、タンパク質は分解されてしまいます。また、ほうじ茶は焙煎する元の茶葉に何を使用するか、焙煎温度の設定や方法などによりテアニン等のアミノ酸の状況は異なります、一般的には番茶を使用しますが、そうでないものもあります(当社の焙じ抹茶天空の説明をご参照ください)。
テアニンの効用としては、以下のものが報告されています。
- 脳の神経細胞を保護し、ストレスや不安を軽減する効果
- 自己免疫や認知機能の改善
- 幸福ホルモンと呼ばれている「セロトニン」などの増加
ピラジン
ピラジンは良質なほうじ茶に含まれる香りの成分です。焙煎する過程でアミノ酸から変化し香り成分のピラジンへと変わります。安価なほうじ茶ではもともとのアミノ酸が少ないため、ピラジンは生成されません。この香り成分は、ほうじ茶、コーヒー、鰹節、チョコレート、焼き肉などの食品の好ましい香りに寄与します。
ピラジンは血管を拡張し、血行を改善する働きがあります。
ちなみに、ダッタンそば茶が血液流動性を改善することは知られています。それはルチンの抗酸化作用によるものと考えられていましたが、それだけでは効果を説明できませんでした。しかし、そば茶の製造工程で生成されるアルキルピラジンが血流改善効果に大きく寄与していることが、2006年の長野県工業技術センター研究報告で公表されています。
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参考資料
健康成分の効用の根拠となる資料をご紹介します。いずれの成分も近年研究が蓄積されつつありますが、その中でも系統的レビュー、メタ分析、査読付論文などのエビデンスの高いものの中からピックアップしています。
カテキン
脂肪分解効果
総コレステロールとLDL(低密度リボタンパク質)コレステロールを減少させます。LDLコレステロールは一般に悪玉コレステロールと呼ばれており、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っていますが、増えすぎると動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞を発症させます。
2011年にJournal of the AMERICAN DIETETIC ASSOCIATION誌に掲載された系統的レビューとメタ分析によれば、145~3,000 mg/日の範囲の用量の 緑茶カテキンを3~24週間摂取することで有意な総コレステロールとLDLコレステロールの減少が確認されています。
(出典:論文DOI: 10.1016/j.jada.2011.08.009)
抗酸化作用と酸化ストレスの軽減
体の酸化が老化促進の大きな要因と言われていますが、体の酸化にはフリーラジカルや活性酸素が大きく関与しています。取り込んだ酸素のすべてを消費できずに2~3%の酸素は余分なものとして体内に残り、フリーラジカル・活性酸素に変化します。これらが体内に生じた状態を「からだの酸化」と呼びます。「からだの酸化」は老化症状を促進するだけでなく、がん、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病の原因にもなります。カテキンには
2021年10月にNutrition Research誌に掲載れた系統的レビューによれば、定期的に緑茶を飲むことで抗酸化状態を高めて、運動による酸化ストレスを軽減することが確認されました。これは1日あたり400-800mgのカテキンの容量範囲で、運動前に1週間以上緑茶を摂取した場合です。
ただし、栄養補助食品としてEGCGを800mh/日以上を摂取した場合、肝臓に悪影響を与える可能性があると、欧州食品安全機関は指摘しています。
(出典:論文DOI: 10.1016/j.nutrea.2021.08.004)
その他の効果(がん予防)
カテキンはがん予防の可能性があると埼玉県立がんセンターは研究結果を公表しています。「緑茶カテキンによる癌予防と治療のメカニズムへの生物物理学的アプローチ Biophysical Approach to Mechanisms of Cancer Prevention and Treatment with Green Tea Catechins」
(出典:論文DOI: 10.3390/molecules21111566)
これは複数の類似的研究を体系的に分析し、バイアスを取り除いた系統的レビューではありませんが、ここでは健康に欠かせない緑茶抽出物2.5gに相当する1日10杯の緑茶を推奨しています。他にもがん予防の研究が公表されています。この分野での研究が進むことを期待されます。
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テアニン
脳の神経細胞を保護し、ストレスや不安を軽減する効果
2019年11月に学術出版のSpringer Nature誌に掲載された系統的レビュー「The Effects of Green Tea Amino Acid L-Theanine Consumption on the Ability to Manage Stress and Anxiety Levels: a Systematic Review」によれば、1日200-400mgのテアニンを補給した結果、深刻なストレスの多い状況の人々のストレスや不安を大幅に軽減しました。これは脳内のアルファ波の生成の増加とグルタミン酸の減少を介して有益な特性を示したものと考えられています。
(出典:論文DOI: 10.1007/s11130-019-00771-5)
幸福ホルモンと呼ばれている「セロトニン」などの増加
L-テアニン ( N -エチル-L-グルタミン) またはテアニンは、緑茶に特有の主要なアミノ酸です。L-テアニンは歴史的にリラックス剤として報告されており、その薬理学に関する科学的研究を促しています. 動物の神経化学研究は、L-テアニンが脳のセロトニン、ドーパミン、GABA レベルを増加させ、AMPA、カイニン酸、および NMDA 受容体に対してマイクロモルの親和性を有することを示唆しています。さらに、おそらくグループ 1 代謝型グルタミン酸受容体に対する拮抗作用を通じて、動物モデルで神経保護効果を発揮することが示されています。動物の行動研究は、学習と記憶の改善を示唆しています。全体として、L-テアニンは、神経保護および認知増強剤の可能性を示唆する神経薬理学を示しており、動物およびヒトでのさらなる調査が必要です.
(出典:論文DOI: 10.1080/J157v06n02_02)
自己免疫や認知機能の改善
2016年5月に国際的な査読付ジャーナルのBeverages誌に掲載された論文によれば、テアニンの投与により、体の免疫システムを改善できるとまとめています。また、タマネギやニンニクなどの食品に含まれるアミノ酸のシステインとの相互作用で、テアニンが免疫機能を調節する誘導体として有望であるとしています。また、認知機能ではテアニンとカフェインの組み合わせ摂取で、計算能力、文の検証、全体的な注意力の大幅な認知改善が見られ、また認知能力や注意力の改善も報告されています。
(出典:論文DOI: 10.3390/beverages2020013)
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ピラジン
ピラジンは血管内皮の弛緩因子を活性化させ、血管の拡張を誘導します。また一酸化窒素の放出を誘導し、末梢血流を増加させることで血管拡張を誘導します。ただし、本研究はラット実験であり、人への効果の確定にはさらなる研究が必要です。
(出典:論文DOI: 10.1248/bpb.b17-00551)
麦茶に含まれるピラジンが血行を改善する効果
日本の飲料ケーカーの研究所が麦茶に含まれるピラジンを摂取した場合、血液通過時間が大幅に短縮し血液流動性に影響を与えると発表しています。
(出典:論文DOI: 10.3177/jnsv.48.165)
"注意":
ここで掲載している日本茶の健康効果は、信頼性の高いエビデンスを備えた学術論文を参考に掲載しています。ただし、医薬品のように、ヒトを対象として十分な治験を経て各国の医薬当局に承認され、医師の処方箋などに基づいて投薬されるものではないため、治療や予防の効果を用法・用量をもって示すことができるものではありません。また、特定の機能増進の効果を期待する特定保険食品として消費者庁(または各国の同様の機関)の許可を得たものでもありません。したがって、日本茶はあくまでも農産物の茶葉を加工した加工食品にすぎません。さまざまな栄養分を含む野菜や魚介類などと同様に、そのユニークで高い健康効果は掲載の学術論文のように認められていますが、身体の治療、予防、改善などを主目的に行う場合は、かかりつけの医師等にご相談することをおすすめします。